1. ライナーウェブ
  2. ニュース&記事
  3. おでかけ
  4. あの頃。

ぼくたちを照らす、光

あの頃。

この記事は最終更新日から1年以上経過しています。
内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
ⓒ2020「あの頃。」製作委員会

仲間。同好の士。共鳴し、衝突し、多くの時間を共に過ごす友。「推し」をきっかけに職業も地位も年齢も関係なく集まった不思議な仲間たち。この作品に描かれている「あの頃」は、その世界をよく知る者にとってきわめてリアルで熱く、懐かしいものであろう。メインカルチャーを席捲する勢いで一世を風靡したアイドル文化とそれを支えたオタクたちのアングラな世界。まさに「あの頃」のアイドル文化の底にあった空気が匂い立つようなリアリティで描かれている。

しかし、いったいなぜ今この題材なのか。そしてこれは誰に向けた、どのようなメッセージなのか。

この作品のリアリティはおそらく当時この領域の周辺に暮らしていた人にしか感じられないだろう。描かれている世界は極めてリアルだが、そもそもこの現実を知っている人の方が少数派のような気がする。それを15年後の現在で映画化することの意図はどのあたりにあるのだろうか。このような話を松坂桃李主演で映画にして、いったいどこへ届けるつもりなのだろうか。

多くの人は、作中で描かれるイベント同様、この映画自体についても、よくわからない内輪ノリを見せられているという印象を受けるような気がする。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

もっと読む

音楽を志してバンド活動をしていたものの、バイトに追われて目的を見失いつつある主人公。ある時、友人が勧めてくれた松浦亜弥のDVDに元気をもらい、彼女のファンになる。そして松浦亜弥のファンになったことが、同じくハロプロ(ハロープロジェクト)系のアイドルを「推す」ファンたちとのつながりをくれ、彼はどっぷりとその世界に入っていく。

この作品はそういう、かなり特殊な世界を描いている。奇しくも筆者はこれに近い領域にいて、ハロプロファンの人たちとも交流があったので、この作品に描かれている世界には親しみがある。登場人物はどれも、実際に知っている誰かに似ている。人物設定や周辺で起こる出来事にもリアリティがあるし、彼らの住んでいる部屋はまさに当時からそのまま持ってきたようだ。あぁ、こんな風だったなぁ、と感じる。懐かしい楽曲が流れ、往年のアイドル達の声が響く。

この映画自体がもっとアングラな作品であれば、この内容はまさに、我々のような層に向けられたものとして見られたであろう。しかし松坂桃李主演のメジャー作品としてこれが出てくると、これはいったいどこへ向けて作られたものなのだろうかという点が気になり始める。この作品を、当時のアイドルシーンにまったく興味を持っていない人が見たらどのように見えるのだろうか。アイドルに熱を上げている少々おかしく見える大人たちに共感を覚えるだろうか。それとも「キモい」と感じるのだろうか。

当時、ハロプロを筆頭とする少女アイドルのシーンは、超メジャー級の世界で展開されながら極めてアングラなファン文化を生むという特殊な状況にあった。その後ハロプロ自体が勢いを失い、代わりにAKB等の大群系が登場し、ファン層の持つ空気も変化していった。今この作品が当時のアイドルオタクたちの生きざまを描いて見せ、不思議とそれに隣接していたインディーズ音楽シーンのライブハウス文化などを垣間見せることで、いったい何を訴えようとしているのだろう。そこに参加していた人々の郷愁を誘うのは間違いないが、そこに留まってしまうのではないか。

映画は劇中で主人公たちが何度も歌った楽曲のオリジナル版を、死の床にある人物が病床で聞いているシーンで幕となる。彼はきっとこの歌を聞きながら死んでいったのであろう。同時に、見ていた私たちのノスタルジーも埋葬される。「卒業」という区切りで終わりを迎えられなかった想いの残滓を閉じるための映画なのかもしれない。

関連スポット

シネプレックス旭川

シネプレックス旭川

住所:旭川市永山12条3丁目ウエスタンパワーズ内

TEL:0570-783-882

永山/アミューズメント

関連キーワード

シネマの時間 バックナンバー

キングダム 大将軍の帰還
震える。心の奥底が。実写版「キングダム」も四作目を迎え、物語は一つの大きな区切りとなる。このシリーズの作品は過去にも紹介していて毎度書いているような気がするけれ... (7月19日)
九十歳。何がめでたい
なにもかもが奇跡みたいな映画だ。原作はあまりにも売れた佐藤愛子のベストセラーエッセイであり、著者は昨年100歳を迎えられてなお健在である。このエッセイをもとにし... (6月28日)
ブルー きみは大丈夫
毎週映画館に通っているのに、この映画の予告を見た記憶がない。今回新作のリストを眺めてタイトルだけでこの映画を選び、まったく知らないまま見たのだが、何度も胸がいっ... (6月21日)
帰ってきた あぶない刑事
8年前、『さらばあぶない刑事』で「サラバだぜ」と言っていたはずの「あぶ刑事」シリーズ、まさかの新作が登場。今回は特にこれで最後だぜという宣言はされていないのだが... (5月31日)
猿の惑星/キングダム
またまた来ました『猿の惑星』シリーズの最新作。こうなってくるともうどこまでも続けるのだろうなという気配が感じられる。1968年のシリーズ第一作のすばらしさはいさ... (5月17日)
PRインターネット広告掲載はこちら »

ニュース / キーワード

ようこそ、ゲストさん

メールアドレス
パスワード

※パスワードを忘れた方はこちら

はじめての方はこちら

アカウント作成

ライナー最新号

2024年7月26日号
2024年7月26日号
ヘラクレスが当たるくじ
他イベント盛りだくさん
28日にわっさむ夏まつり
紙面を見る

ピックアップ

注目グルメ
注目グルメ
定番から新作まで
ライナーが今注目する
お店の味はこれだ!
つくろう旬レシピ
つくろう旬レシピ
プロの料理人が教える
季節の食材を使った
絶品レシピをご紹介
味な人
味な人
北北海道で食に携わる
人々の横顔をご紹介
シネマの時間
シネマの時間
映画ライター・ケン坊が語る新作映画と
そのみどころ
みらい農家
みらい農家
地域の未来を
耕す人たちを
紹介します
ものぴりか
ものぴりか
ライナーが集めてきた
地元の素敵な品々を紹介します
不動産情報
不動産情報
不動産・リフォーム等
住まいに関する情報を公開中
クーポン
クーポン
お得なクーポンを公開中
お知らせ
お知らせ
お店・スポットの
お知らせ
ラーメンマップ
ラーメンマップ
ラーメン食べたいなぁ
そんなときは専用マップで探してみよう
開店・移転・閉店
開店・移転・閉店
旭川市・近郊エリアの新店や創業などの話題。情報提供も歓迎!
星占い
星占い
7/23〜29

ページの最上段に戻る