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- 店名の「コシナデマリア」は「マリアの台所」という意味のスペイン語。「本当は『マリアズキッチン』と名付けたかったんだけど、近所にキッチンとつく別のお店があったから、違うのにしたの」とあっけらかん
フィリピンのセブ島で生まれ、23歳で来日したマリアさん。ダンスやバレエのレッスンを受け、タレントとしてショーのバックダンサーを務めていました。華やかな衣装で踊る毎日は楽しくて刺激的。でも、かつてキリスト教系の女学校に奨学金を受けて通っていた敬虔な少女の変貌ぶりに、同級生は驚いたそうです。
ほどなく日本人の夫と結婚して旭川に住み始め、しばらくは一男一女を育てる日々が続きました。やがて子供たちが大きくなると、昨年の夏、念願だったフィリピン料理の食堂をオープンします。実はマリアさんが家で作るのは、夫が好む日本料理ばかり。「日本人はフィリピン料理を食べるの?お客さんは来てくれるの?と不安でした」とマリアさん。けれどそんな心配をよそに、塩コショウ、醤油などをベースにした味は多くの日本人に受け入れられ、徐々にリピーターも増えるように。店ではとんかつや生姜焼きなども提供していますが、子供の頃よくお母さんに作ってもらった焼きそば「ギサドン パンシット」や淡水魚のティラピアを揚げた「サルシャドン ティラピア」、マリアさんお気に入りの豚肉の炒め物「ピナクビット」など、故郷の料理にも少しずつ注文が集まっています。また、フレンドリーな接客も名物のひとつ。「量が多い」と言う馴染み客には「あら、ほんと?でも全部食べたじゃん!」と切り返します。
現在、旭川市内には90人ほどのフィリピン人が暮らしています。マリアさんは自身の経験もふまえ、市役所でのさまざまな手続きや受診時の通訳など、異国で慣れない暮らしをする同郷の仲間たちをサポートする組織を立ち上げようと奮闘中。「手と手、心と心で繋がれると、心強いでしょ」。底抜けの明るさは、強さであり、優しさでもありました。