1. ライナーウェブ
  2. ニュース&記事
  3. シネマの時間
  4. 記憶屋 あなたを忘れない

今日の風に吹かれましょう

記憶屋 あなたを忘れない

この記事は最終更新日から1年以上経過しています。
内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
ⓒ2020「記憶屋」製作委員会

記憶屋と聞いて、記憶を売るような『トータル・リコール』みたいな話を想像した。本屋は本を売っているし魚屋は魚を売っている。八百屋は八百を売っているし万屋は万を売っているはずだ。走り屋は走りを売っていて当たり屋は当たりを売ってい…ないような気がする。どうやら〇〇屋は〇〇を売っている人とは限らないようだ。

ここでの「記憶屋」というのは記憶を売るのではなく、記憶を消してくれる存在だ。消したいほどひどい記憶、すなわち、忘れたいほどの出来事。ありますよね。些細なことから大きなものまで、「忘れてしまいたい」と思うこと、一つぐらいはあるでしょう。それを本当に忘れられるとしたら…。

この作品の原作はホラーのレーベルから出版されているようだけれど、この作品はホラーではなく、記憶を操作するSFでもない。これはとてもせつない恋愛映画なのだ。人は誰かに記憶されることで生きている。誰かの記憶から完全に消えてしまったら、その誰かの世界から自分はいなくなる。

素晴らしいラストシーンから見事なエンドロールへと繋がる。たった今まで見てきた物語のすべてが詰まった歌。稀に見る素晴らしいエンドロール。誰一人席を立たないだろう。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

もっと読む

記憶を消すといえばSFだ。昨年の『レプリカズ』はまさにそういう感じで、人の記憶の中からある人物の記憶だけを消したりしていた。そんなに都合よく消せるものか。ある人に関する記憶というのは他のさまざまな要素と絡み合っていて、一見無関係な記憶と結びついていたりする。ちょっと考えてみてほしい。知人の誰かを思い浮かべる。その人に関する記憶というのは決してその人と直接一緒に過ごしたものだけではないはずだ。たとえばオムレツを食べながら、「あぁ、あの人がオムレツ好きだったな」とか「あいつはオムレツに醤油をかけていたな」とかいう具合に絡まっている。ある人物の記憶を消す時にこのオムレツと紐づいた要素まで消すことは難しいだろう。

本作では「忘れたい記憶を消す」ということがあっさり行われる。他の要素が損なわれないまま、都合よく消したいものだけが消せる。それによって「愛する人の記憶から自分がいなくなる」という状況を作り出している。そう。これは恋愛映画なのだ。

この「愛する人が自分を知らない状態になってしまう」というのは、記憶障害を持つ恋人という形でさまざまな映画になっている。短時間で記憶がリセットされてしまう人などが登場し、そんなことが起きたらどうするのか、という物語を描く。本作はそれと似たようなことを違った方法で描いていると言える。

「消してしまわないと生きていけないような記憶」を本当に消してしまうということについて、是非を問うようなシーンはある。しかし作品のスタンスはあくまでニュートラルで、作品としてその是非に対しての立場は表明していない。純粋に問題提起だけをしているように見える。そして最終的にそれらを恋愛映画として描いている。難しいことはさておきせつないね、という感想が去来する。

この上なくせつないラストシーン。その存在を知る人の記憶から自分を消して去っていく記憶屋。自分を知っている人の記憶から自分を消してしまう。忘れられてしまったというよりは、初めからいなかったような感じだ。人波に紛れていくその後ろ姿が哀しい。それと対照的に、記憶屋のことを忘れて新しい希望を見出す主人公。もう記憶屋のことは記憶にない。「あぁ。」と思う。主人公にとっては前向きな結末だが、それでいいはずはないだろうと思わずにいられない。複雑な感情が沸き上がりかけたその時、静かにピアノが響く。中島みゆきの『時代』。本作の主題歌としてエンドロールに流れる。その歌詞の一つ一つが、たった今見終えたこの切ない物語のあらゆるシーンを呼び起こす。どんなにつらいこともいつか笑って話せるようになる、という歌詞。劇中ではそれを記憶から消してしまうのに。たおれてもあるきだす。わかれてもめぐりあう。こんなにも見事なエンドロールはそうそう無いだろう。

関連スポット

イオンシネマ旭川駅前

道北最大級の8スクリーン1,200席

イオンシネマ旭川駅前

住所:旭川市宮下通7丁目2番5号 イオンモール旭川駅前4F

TEL:0166-74-6411/駐車場:900台

宮下通/アミューズメント

  • 駐車場
ディノスシネマズ旭川(スガイディノス旭川)

各種クレジット・電子マネー使用OK!PayPay、dポイントも対応♪

ディノスシネマズ旭川(スガイディノス旭川)

住所:旭川市大雪通5丁目496-5

TEL:0166-21-1212(代表)/0166-21-1233(映画)

大雪通/アミューズメント

  • 駐車場
  • カードOK
  • 電子マネー可
  • お子様連れ歓迎
シネプレックス旭川

シネプレックス旭川

住所:旭川市永山12条3丁目ウエスタンパワーズ内

TEL:0570-783-882

永山/アミューズメント

関連キーワード

シネマの時間 バックナンバー

ザ・ロストシティ
考古学冒険恋愛小説を書いている作家が隠された秘宝を探している大富豪に誘拐され、それを小説の表紙を担当しているモデルさんが助けに行く、という話。このあらすじだけで... (7月1日)
はい、泳げません
幼少期のトラウマにより、泳げないまま大人になってしまった主人公。本作は彼が一念発起、スイミングスクールに通うという話で、序盤はコメディタッチで進む。主人公は大学... (6月17日)
トップガン マーヴェリック
「待望の」という言葉は使い古されていてもはや本来の意味などどこかへ消え去っているのだが、この作品ほど本当に「待望」されていた映画も珍しかろう。『トップガン』の続... (6月3日)
シン・ウルトラマン
シン。新であり、真であるウルトラマン。「カイジュウ」や「カトクタイ」といった用語を音はそのままに文字を変えて使っている。冒頭からそのカトクタイの設置からの経緯を... (5月20日)
カモン カモン
言葉にならない。じんわりと温かい気持ちが広がって、それぞれのシーンが思い出され、「ああよかった」と思う。この映画に出会えてよかったと、思う。 独身中年男が、妹の... (4月28日)
PRインターネット広告掲載はこちら »

ニュース / キーワード

ようこそ、ゲストさん

メールアドレス
パスワード

※パスワードを忘れた方はこちら

はじめての方はこちら

アカウント作成

ライナー最新号

2022年7月1日号
2022年7月1日号
世界のワインを飲み比べ
旭川トーヨーホテルで
夏のグルメフェスタ
紙面を見る

ピックアップ

注目グルメ
注目グルメ
剣淵で爆誕!スーパー
フードを日常食に
キヌアラーメン
シネマの時間
シネマの時間
映画ライター・ケン坊が
新作映画を語る
「ザ・ロストシティ」
味な人
味な人
創業113年の老舗
河井商店4代目
河井 隆郎さん
つくろう旬レシピ
つくろう旬レシピ
家庭菜園でも人気の
オクラとトマトで
和風ペペロンチーノ
昭和喫茶探訪
昭和喫茶探訪
30代ライナー社員が
喫茶店のノスタルジックな魅力にふれる
不動産情報
不動産情報
不動産・リフォーム等
住まいに関する情報を公開中
ラーメンマップ
ラーメンマップ
ラーメン食べたいなぁ
そんなときは専用マップで探してみよう
開店・移転・閉店
開店・移転・閉店
旭川市・近郊エリアの新店や創業などの話題。情報提供も歓迎!
星占い
星占い
7/5~11の運勢

ページの最上段に戻る