TAP THE LAST SHOW
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ラストショーから始まる物語

 最近ではすっかり「相棒」の右京さんのイメージが定着した水谷豊。本作は彼が長年温めてきたという題材を描いた初監督作品である。

 天才ダンサーでありながら不慮の事故で道を閉ざされた主人公が、ある劇場の最後のショーとして若手ダンサーを鍛え上げ、様々な困難を乗り越えながらショーを作っていく様を描いている。今年このコーナーで紹介してきた「ララランド」、「チアダン」、「シング」などに描かれていたものと共通する要素が散りばめられているが、どの作品にも劣らず引き込まれる。

 ショービジネスとスターの盛衰を描いた物語だが、その最後のショーは彼らの引退公演ではなく、無名の若手のデビュー戦になっている。ある者のラストが次の世代のビギニングになる。そのショーを作り上げるまでの紆余曲折で人々を描き、後半はショーそのものを見せる。タップダンスをよく知らない人でもその魅力に釘付けになるだろう。ショーのシーンはソリストの演技が終わるたびに思わず拍手しそうになるほどの臨場感がある。

 移ろいゆく時代の中で脈々と受け継がれていくもの。決して終焉ではないラストショー。そのタップダンスの迫力はやはり劇場の音響で体験してほしい。

ディノスシネマズ旭川で上映中

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 水谷豊がタップダンスを愛しているというのは、いつどこで知ったのか定かではないものの知っていた。そのため、水谷豊が長年温めていたタップダンスの映画を作ったという話を聞いて、「おっ!」と期待を持った。そしてその期待を大きく上回る大変な作品に出会うことになった。

 時代の流れの中でその役割を終え、閉館することになった劇場。その劇場が最後の作品として往年の天才ダンサーを演出家に迎えてショーを企画する。天才は無名の若手を集めて未来につながるショーをやることにし、その思いに劇場の支配人も共感する。傾いた劇場が無名の役者でショーを作るというのはそのまま「シング」と同じような題材である。天才指導者は若手を超スパルタ教育する。その様は「セッション」のようだし、努力の果てに見える景色を見せたいという想いで若手に接するのは「チアダン」のようでもある。さらに後半のショーのシーンは舞台演出をそのままスクリーンに再現したような映像になっていて「ララランド」のようだ。映画は不思議と、こういう風に同じような方向を目指した作品が同時期にたくさん出てくるということがあって興味深い。

 閉館を迎える劇場。病によって命の灯も消えそうなその支配人。事故によって未来を奪われ、アル中のようになっている天才。彼ら「終わりゆく」者たちが最後に未来へつなぐためのショーを作り上げる。終わりが次の始まりを生む。本作はこのテーマにもう一段踏み込み、親から子への命のバトンも繋がれてゆく。

 水谷豊というベテラン俳優が、初めての監督作品として「ラストショー」という名のついた映画を作り、そこから始まる物語を描いている。とても象徴的な作品だと感じた。タップダンスにも水谷豊にも興味がない、という人でもきっと楽しめる。心が震えるような迫力のショーをぜひ劇場の音響で堪能していただきたい。

2017年6月23日