真田十勇士
©2016『真田十勇士』製作委員会

嘘か真か 真か嘘か

 国民的ヒーローものの一つと言っても過言ではない真田十勇士。本作はその真田十勇士を、真田幸村が実は腰抜けで、十勇士が名将に仕立て上げた、という切り口でかなりドタバタ喜劇として描いている。意欲的な映像化と言えそうだ。幸村が実は腰抜けというのも挑戦的な設定だが、さらに十勇士の中に幸村の息子がいる、という設定になっており、なかなか斬新な切り口である。随所に「そんな話にしちゃっていいのか」と思うような展開もあり、いろんな楽しみ方ができそうだ。

 そもそも戦国の歴史というのは後から記録されたものが多く、一応史実とされているが、どこまでが真実なのかはよくわからない。本作はそれを逆手に取り、架空の話と史実を織り交ぜ、更に新しい要素も盛り込み、徹底的に「何が嘘かわからない」状態を作り出していて、全編に渡ってドタバタでハチャメチャだが、痛快で楽しい喜劇に仕上がっている。

 更にかなり細かいところだがナレーションに松平定知を起用しており、NHKの「その時歴史が動いた」を彷彿させるような演出になっていて、これがまた「史実感」を増強するのに一役買っている。なんとも芸が細かい。

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ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 冒頭、いきなりアニメが始まる。集まった観客のほとんどが「あれ?」と思ったのではないか。佐助と幸村の出会いから、十勇士のうち九人が集まるところまでをアニメとして描いている。途中、「この映画はアニメ映画ではない」という断り書きが出て、違う劇場に入ってしまったわけではないことを教えてくれる。とはいえこのアニメ部分もけっこう見ごたえがあり、存分に楽しんでほしいところではある。

 真田十勇士自体がもともと史実の上に架空のキャラクタを配置した架空戦記的エンターテイメントなので、正しい(とされている)歴史を知らないまま作品に触れると、それこそ何が史実(とされている)のかわからない状態になってしまう。真田十勇士で描かれる大坂冬の陣、夏の陣などは史実であるが、ここに描かれている内容はフィクションであるということを理解しておく必要がある。

 特に、本作はかなり意欲的に新しい要素を入れてきているため、良く知られている真田十勇士とも違う話になっている。例えば根津甚八は幸村の影武者として死んだという話が一般的だと思うが、本作では秀頼の影武者を務めており、死なない。また、本誌にも書いたように幸村の息子である大助が十勇士に参加している。さらに衝撃的なことに、幸村が大坂夏の陣で大助ともども討ち死にしてしまうのである。これには「マジで!?」と思わず叫びそうになった。一般的に真田幸村は大坂夏の陣の後薩摩へ逃げ延びたということになっており、墓も薩摩にある。大助まで一緒に死んでしまうこの切り口はかなり斬新であった。

 そして、本編終了後、エンドロールで生き残った者たちの後日談が流れるわけだが、その内容がまたすごい。エスカレートに次ぐエスカレート。死んでいったメンバーも含め、そっくりさんで新たな十勇士が結成されたり、一緒に逃げ延びた秀頼が行動を共にし、一度大陸へ行ったあと天草四郎として戻ってきたりしている。秀頼の子供が天草四郎だという説は一応あるが、本作では秀頼本人が天草四郎になったような描き方をしている。

 全体的にかなり新しい真田十勇士と言える。今回のものが新たなスタンダードとなるのか、あるいはさらに違うものが出てくるのか。いずれにしても真田十勇士は日本人を魅了してやまないヒーローものとして語り継がれていくことになりそうだ。

2016年9月30日