内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
日本中、いや世界中を熱狂の渦に巻き込んだワールドカップも終盤。日々押し寄せる原稿の波をギリギリで乗りこなしていたら、気づけば今年も残りわずかとなっていた。ニュースで見た試合結果と、「ミトマ」「ドウアン」という知識ともいえない切れ端頼りの会話に、なんとなく申し訳なさを感じる毎日。とはいえ仕方ない、興味の幅が狭いということは自覚している。
そんな僕が高揚してしまう言葉のひとつが「ヒガワリ」だ。献立を予想し、期待に胸を膨らませながら注文する。蓋を開けて、今日はそう来たかと心が躍る瞬間。そう、日替わり弁当にはドラマがある。今日は大当たりだ。和も洋も関係なく、肉に魚、彩りと栄養を兼ね備えた野菜類に、なんとマグロの刺身まで。これで800円。45年前から作り続ける、店主の見事な采配ぶりがうかがえる。
一口目は必ずみそ汁と決めている。まっさらな状態で味わい、お椀を置く瞬間までに最初の一手を考え、お椀を置いたと同時に、右手の箸で左端のきんぴらごぼうを食べた。こってりとした照り焼きの後にはトマトを、箸休めにはたくあんを一口。縦横無尽に弁当箱の中を駆け回り、おかずと白米を次々に口へ放り込んでいく。どういうペースで食べ進めるか、それを考えるのが楽しくてたまらない。完食まで、あっという間の15分。食後の水がやけに身体に沁みた。
ワイドショーでは、昨日の試合のハイライトが流れている。壁には、絵画や写真が飾られていた。ママの趣味が反映された空間。年代物のクーラーやスピーカーも、今日まで続く長い歴史を物語っている。果てしなく続くものではないというのも、喫茶店に惹かれる理由。その一瞬にでも触れていられたなら、こんな幸せなことはないだろう。(文/武山 勝哉)
馬酔木 -あしび-
旭川市東7条8丁目1-1
TEL/0166-22-2013
営/11:00-17:00
休/日曜、祭日