陰影のメリハリを楽しんで
緑と白の切り絵の世界

カッターで幅数ミリの曲線を自在に切り出していくのは、旭川在住の切り絵作家・佃正春さん。見ているだけで息が詰まるような繊細な作業です。元寿司職人の佃さんが使うのは紙ではなく、お寿司の仕切りとして使う笹の葉を模したバランです。仕事でバランの飾り切りをしていたのをきっかけに、切り絵の魅力に惹かれていきました。

「切り絵やっている人で絵がうまい人はいないの。絵が描ければ絵を描くんだから」と佃さんは笑いますが、やはり制作には独自のセンスやテクニックを要します。切り絵は通常、黒か白かのモノトーンの世界。佃さんの場合は、バランの緑と白の2色になりますが、メリハリをどうつけるかが腕の見せどころなのは同じです。

題材を決めると図書館などで資料を集め、カラー写真を元に構図を定めて、まずは白黒原稿を作ります。その後はバランに重ねてひたすら切り出す作業。切り過ぎてしまうと修正がきかないため、「時々、くそーなんて言いながら切っているんだけど、やればやるほど奥が深いんだよね」と佃さん。干支や仏像をはじめ、大好きな俳優・高倉健さんなどをモチーフに、時には幅が90センチもある大作を手掛けます。

10月2日(火)から10月31日(水)まで、佃さんがオーナーを務めるぎゃらりー松葉で、20人の作家の作品を集めた切り絵仲間展を開きます。佃さんは、依頼を受けて制作したという彼岸花や昔の長屋の風景をモチーフにした作品などを展示します。「いろんな人の作品が並ぶと、それぞれ作風の違いがわかっておもしろいですよ」と佃さん。

入場無料。午前10時から午後5時、月曜休館。問い合わせはぎゃらりー松葉(電話080・6073・2780)へ。