内容のー部もしくは全部が変更されてる可能性もありますので、あらかじめご了承ください。
人はなぜうたうのか。ストレス解消、ボケ防止、ダイエット、平和のため―。人生経験を重ねた大人たちがうたう理由はさまざまです。いま、「うたうこと」に夢中な彼らを取材しました。
歌って踊って気分すっきり

- ヤマハの「青春ポップス」教室には、まさに〝リア充〟の〝キラキラ女子〟がいっぱい!合間にはしっかり水分補給をして、運動靴持参の人も
「足をシュッと出して。宝塚のイメージで!」。元気に響く講師の声に、生徒から笑いがもれました。早速足を運んだのは、ヤマハミュージックリテイリング旭川店が昨年の夏から始めた、歌って踊れる「青春ポップス」の教室です。
スクリーンに映る専用の映像に合わせて、ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」やあみん「待つわ」といった誰もが口ずさめる昭和のヒットソングに、簡単な振りをつけて歌います。和気あいあいとした雰囲気ながら、音程をとるパート練習や振り付けの確認などなかなか熱心。みなさん本気のご様子です。
「間違っちゃいけないとか、うまくやらなきゃなんて考えなくていいんです。ハモる時も、上のパートでも下のパートでも好きな方を自由に歌っていいし、とにかく楽しんで」と講師の荒川先生はにっこり。90分のプログラムもあっという間です。「青春ポップスは『カラオケ以上、レッスン未満』という位置づけで、習うことより楽しむことを重視したサークル感覚のプログラムです。音楽を通して、生活を豊かにできたら理想ですね」と話すのは同社の甲斐三保子さん。たしかに、教室から出てくる生徒たちは、運動後のように頬がほんのりピンクに色づき、充実感に満ちています。
生徒たちの始めた理由はいろいろですが、「思いっきり声を出せるのがいい!家じゃできないから」「だんだんうまくなるのがいい気分」「家で家事をしながら思わずステップを踏んでいる」といった明るい声がたくさん。人気上々で、今月からは豊岡センターでも実施を始めました。まだ若干の空きがあり、男性の申し込みもあるそうです。
終戦記念日に第九を歌う

- あさひかわ第九の会のメンバーは、現在男性8人、女性19人で平均年齢は65歳
設立15年目のあさひかわ第九の会は、毎週日曜の午後1時半から2時間ほど、北星公民館に集まり、ベートーヴェンの交響曲第9番、通称「第九」の混声合唱を楽しんでいます。
代表の石黒勉さんは、もと旭川市木工芸指導所の技術者で、20代の頃に研修で3年間、西ドイツで暮らしました。第九との出会いは2002年、旭川音楽鑑賞協会が世界的指揮者「炎のコバケン」こと小林研一郎さんと日本フィルを招いた演奏会を企画した際、ドイツ語詞の解説を依頼されたことから。もともとは歌謡曲や演歌が好きだった石黒さんですが、「第九の歌詞はシラーという人の『自由のために』の詩の一部。第九は歓喜の歌として有名ですが、本来は自由、平等、博愛を歌ったもので、それをみんなで分かち合いたいと思いました」と会立ち上げのきっかけを語ります。
会の初演は、設立翌年の8月6日。広島原爆の日に、世界平和を願ったこの歌を歌いました。「日本では年末の定番曲のようにいわれますが、この時期に歌うことで、より日本らしい表現ができると気付いたんです」。その後も毎年、終戦記念日のある8月に、演奏会を開くことに決めました。これまでに、市内の北日本フィルや陸上自衛隊第2師団、目が不自由な弾き振りのピアニスト・宮崎剛さん、早稲田大の男声合唱団グリークラブなどと共演を重ねています。
「難しい歌詞ですが、会員みんながいつでも歌えるよう繰り返しレッスンしています。今後はさらに第九を極めるべく、ベートーヴェン自身やドイツ語、ドイツ文化についても幅広く学んでいきたい。ときには第九の生演奏を聴きながら、ケーキとコーヒーで気分転換も忘れずにね」。
17文字にユーモアのせて

- 昭和11年から続く旭川川柳社。主幹の庄司さんは元教諭で、日本けん玉協会一級指導員の一面も
声を出して歌うのは恥ずかしい…というシャイな人は、川柳をうたってみるのはいかが?月に2回、ときわ市民ホールで句会を開いているのは、旭川川柳社のみなさんです。
「季語がいらず、口語で作れる川柳は誰でも楽しめるものですよ」と主幹の庄司昭志登さん。説明や解説じみた句になってしまうのは面白みがなく、はっと思わせるのがいい川柳だそう。
取材日は、宿題となっていたお題が2つあり、庄司さんらが選者となって優秀な句を発表していました。続いて、席題。席題とは、本来その場でお題を出して詠むものですが、「もう年だからスッと思いつかない」というメンバーの声を受け、いつからか宿題となってしまったというから、何とものどかです。
メンバーは「頭を使うからボケ防止に」と始めた人もいますが、「運転中にひらめいたら、止まってすぐに携帯に打ち込むの。三歩歩いたら忘れちゃうから」と作句する人も。「わずかな文字の中に人間の本性が見えてくることがあります。あの人はこういう風に思っているんだとか、機微を感じられますね」とその奥深い魅力を教えてくれました。
たとえば「拗(す)ねる」というお題では、「拗ねてると背なに届かぬサロンパス」「脳はもう錆びたか減ったか働かぬ」「想定外拗ねた子らから介護受け」といった、思わずくすりとさせられる作品が並びます。老いや物忘れも笑い飛ばす、度量の広さが印象的です。旭川川柳社では月に1回、「川柳あさひ」と題した作品集を発行し、他の人の作品を見て研鑽を積んでいます。
夢中になるものがあると、人は生き生きします。「うたうこと」を始めてみたら、楽しい時間や新たな出会いが待っているかもしれません。
■取材協力
ヤマハミュージックリテイリング旭川店(☎0166-24-4500)
あさひかわ第九の会(☎090-1523-9034、代表・石黒勉さん)
旭川川柳社(☎0166-37-2582、庄司昭志登さん)











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