中田 竜明さん
もと温泉旅館の建物の一部を借り、自ら手作りした石窯でパンを焼く中田さん(32歳)。現在はWEB通販でパンを全国販売しています。店頭販売は春ごろを予定。カタクリの花が咲くころ、男山に新しいスポットが誕生します

店、窯、酵母、すべて自作
パン作りと森の保全、同じ目線で

 旭川市の果ての果て、春には可憐なカタクリで薄紫に染まる突哨山のふもとに、一軒の薪窯パン屋さんが誕生しました。スタイリッシュな内装も本格的な薪窯も、店主の中田竜明さんがひとりでいちから作り上げたものです。

 静岡県でバイクのデザインを生業としていた中田さんが、まったく畑違いのベイカーになった理由は、森にあります。「バイクで旅をしていたとき、森が人の身勝手な暮らしによって荒らされていることを知りました」。海や山に身を置くことで安らぎを得ていた中田さんが、森林保全に関わることを望んだのは自然な流れ。各地を巡ってヒントを探す中、間伐材を燃料に薪窯でパンを焼く人々に出会います。「環境に負荷をかけず自分も周囲も笑顔になる、最高の仕事に思えたんです」。

 それまで小麦粉に触れた経験すらなかった中田さんは、すぐに長野にある天然酵母のパン屋で勉強を始めました。試作を繰り返す中で行き着いたのは、小麦と玄米をブレンドした粉と、米麹から起こした酵母で作るハード系のパン。洋のパンでありながら和の風情をまとう独自の趣きで、「酸味を抑えているので、子供やお年寄りにも食べやすいと言っていただけます」。

 旭川の林業家から仕入れたカラマツ材で焼き上げることで、地元の山に日常的に関わる機会も得ています。パン屋への道を決めてから、密林を切り開くようにひとり手探りで進んできた中田さん。「実際には多くの人の手を借りて、オープンまでこぎつけました。これからいよいよスタートです」と気を引き締めます。一見非常にストイックな中田さんの手から生まれるパンには、自然への思いや人々への感謝がぎっしり詰まっているのです。

2017年2月14日