歯磨き習慣の定着や8020運動の推進もあり、一昔前に比べると一生のうちに歯を失う本数は減り、たくさんの歯が残っている年配の方が増えています。
このことだけを聞くととても良いことなのですが、実は近年、歯が多く残っているがために起こっている問題があります。
それは、介護の現場や通院が困難になったことで充分な口腔ケアやメンテナンスを受けられなくなった方たちのお口の状態です。
どういうことかというと、例えば8020運動をクリアして20本以上の歯が残っていたとしても、その歯が歯周病でグラグラして噛めなかったり、古い被せ物が入ったままで汚れが蓄積し細菌の温床になっていたりすることがあります。
つまり歯が多く残っているということは、同時にケアしなくてはいけない歯も多いということなのです。
通院してメンテナンスを受けられる間は問題ありません。
しかし、年齢とともに全身状態が悪化して通院が困難になったとき、それまでなんとか保っていた歯は炎症を引き起こす原因となり、抜歯リスクが高まります。
もしそのとき外科治療が難しいような全身状態であれば、抜歯ができず対症療法となり、著しく口腔機能が低下する可能性もあるのです。
ですので「歯を残すことだけ」を目的とする治療はあまりおすすめできません。
一人ひとりのライフステージを予見した治療計画が、超高齢社会には求められていると考えています。