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温故知新

トップガン マーヴェリック

ⓒ2021 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

「待望の」という言葉は使い古されていてもはや本来の意味などどこかへ消え去っているのだが、この作品ほど本当に「待望」されていた映画も珍しかろう。『トップガン』の続編を作るという話は実に10年以上前からあったのだが、前作のトニー・スコット監督が自殺してしまうなど紆余曲折あり、さらに、無事に撮影が行われた後公開が延期され、本当に全世界が待ちに待った公開となった。

前作から35年が経過し、空中戦を取り巻く情勢は大きく変化した。今や高度にコンピュータ化された高機動戦闘機(作中では第五世代戦闘機と呼ばれている)や無人機(ドローン)が跋扈している。さらに冷戦は終結し、具体的な国を仮想敵として映画に描くことも難しい情勢となった。この状況下ではたして凄腕パイロットがその腕前で空中戦を切り抜けるという物語が成立するのか。

本作はそんな懸念を全部吹き飛ばす展開を用意し、しかるべき説得力を持って舞台が用意されていた。前作を愛したファンの見たいものが、ただのノスタルジーではない形で結実していた。35年分迫力を増した映像に度肝を抜かれ、熱いストーリーに震える。今年もっとも見るべき映画はこれかもしれない。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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冒頭から涙が出そうになる。オープニングでもう、この映画はわかってるな、と感じる。35年前のトップガンを見て震えた世代がなにを期待しているのか。オープニングが流れた瞬間に、この映画は確実に満足をくれると感じた。

破天荒な天才、マーヴェリック。本作は彼を再び主人公に据え、年をとった彼がとんでもないミッションに挑む姿を描いている。そこに前作のエピソードを引き寄せる二人の人物が絡み合う。一人は前作で良きライバルであったアイスマン。もう一人は前作でマーヴェリックのバディだったグースの息子だ。前作からは時代が大きく変わり、海軍航空隊音装備も大幅にアップデートされている。今や戦局はパイロットの技能ではなく、高度にコンピュータ化された情報戦に左右される。加えて、前作当時は冷戦状態であり、アメリカ映画の仮想敵はソ連であった。あからさまにソ連と戦う映画を作ることに何ら問題はなかった。ところが冷戦は終結し、ソ連は解体された。その後湾岸戦争への介入、テロとの戦い等があり、アメリカの立場はデリケートなものになった。今、アメリカ映画で具体的な国を仮想敵として描くことは倫理的に大いに問題があろう。そのため多くのエンターテイメント映画では敵は宇宙からやってくる。もはやトップガンのような物語は時代遅れなものになったのだ。

そんな中にあり、本作はあくまでリアリティを追い求めながら物語を牽引していく。今回敵として描かれているのは地球上のなんらかの国であることが示唆されているが、具体的な国名も、位置も曖昧にしてある。核拡散防止条約に違反して各処理施設を建造しようとしている、という、叩くべき理由を用意してあるだけで、「誰」と闘っているのかということは明らかにされない。さらに、極めて困難な状況を用意し、あえて旧式のFA-18を使用するとうミッションを用意する。これによりパイロットの技能がより重要になる。しかし新型の戦闘機が出てきたら勝ち目はない、といったことも描かれる。トップガンの続編として描くべきことを描けるだけの設定を張り巡らし、懐かしい人物もしっかり登場させ、なおかつマーヴェリックのドラマを描く。全方位的に完璧なのである。

さらに。前作『トップガン』を愛したファンは、あの美しい可変翼を持つ機体、F-14が大好きであろう。マーヴェリックが飛ぶのならF-14に乗ってほしいと思うファンは少なくないだろう。もちろん私もそうだ。そしてこの作品は、見事なストーリー展開でそのシーンを用意する。過去の遺物と化したF-14がそう無理のない形で登場し、少々ムチャな展開はありつつもマーヴェリックの手で空に舞う。ファン感涙である。

申し分ない。これ以上ない。歴史的名作『トップガン』の続編としてこれ以上のものは考えられない。

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