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未来をあきらめない

総理の夫

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ⓒ2021「総理の夫」製作委員会

史上初の女性総理の誕生を、その夫の側から描くという意欲的な試み、ではあるのだけれどいろんな要素が非日常すぎてリアリティがない。もっと女性総理というものがあり得なかった古い時代を描くのならまだしも、近い将来実際に誕生する可能性も見え隠れし始める現代において、もう少しリアルな設定で描いても良かったのではないかという気はした。設定を荒唐無稽なものにした結果、史上初の女性総理という像自体が未だ現実味のないものに見えてしまったし、マニフェストと選挙の行方などにもリアリティがないので政治的問題提起にはなっていない。きっとそこは特に目指していないのだろうけれど、女性総理を描くのに政治描写が甘いのはやはりマイナス要因だと感じる。

ただ、俳優陣が素晴らしく、メッセージ性に物足りなさは感じるが映画として十分面白い。政界のドンみたいな岸部一徳は裏表のありすぎる人物を好演しているし、凛々しい中谷美紀の総理と優し気な田中圭の夫の軽妙なやり取りもステキだ。各所に配置された脇役も一人一人に魅力があり、全体的に軽めの暖かい笑いが心地よい。ストーリーの細部は気にせずに、キャラクタを味わうと楽しめるだろう。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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政界もまだまだ男性優位の傾向があるものの、次第に女性の進出も広がり、ようやく総理大臣というポストの近くにも女性が登場するようになった。初の女性総理誕生はそれほど現実味のない話ではなくなってきた。まだいくつもハードルは残っているだろうけれど、まったくあり得ない話ではない。そういう時代に「史上初の女性総理」を描くという試みはもはや日常と地続きのものとして描いた方が良いように思う。ところがこの作品は初の女性総理となる人物の夫が巨大企業体、おそらく財閥のようなものの御曹司という設定で、作品冒頭でまったくリアリティのない豪邸に住んでいる。この夫の母がグループの会長、兄がCEOを務めていて、夫自身は鳥の研究家であるという設定だ。見事に、どこにもリアリティがない。総理大臣というポストに手が届くような位置にいる女性のリアルがどのようなものか、わたしにもあまり想像できないのだが、そこを取材してリアリティのある「家庭」を描いた方が「総理の夫」というポジションを描くのには有効だったのではないか。この夫の設定があまりに荒唐無稽であるため、付随して作品の根幹もまた荒唐無稽なものに見えてしまっている。

初の女性総理という人物が史上最年少の総理でもある。史上初の二段盛りなのだが、中盤で理由がわかる。総理が妊娠するのだ。総理は妊娠し、辞職して出産するという選択をする。女性が総理大臣になり、その総理が妊娠・出産をするという図式が必要だったため、最年少の首相という要素まで持ち込まざるを得なくなったのであろう。この設定は明らかに物語の都合であり、もしかしたらこのご都合主義を隠すために夫が荒唐無稽な設定になっているのかもしれない。

政局に関しても、総理は窮地に立たされ、衆議院を解散、総選挙へ、という運びになる。ここで総理の政党はかなり思い切ったマニフェストを掲げる。このような主張が支持を得ることは大いにあり得るだろうが、それにしても選挙結果が極端すぎるのだ。それまで与党第一党であった政党が大敗し、総理の小さな政党が圧勝する。議席数で上回るぐらいの描写なら良いが、あまりにも大勝しすぎることによって嘘くささが増しているのである。

本誌にも書いたように、俳優陣が魅力的で、脇役にも光るキャラクタがたくさんいる。夫の兄はクセのありすぎる人物で面白いし、二人の母も強烈。ゆすりをかけてくる政治記者も独特の味があって目が離せないし、巨大政党を率いる岸部一徳はぴったりすぎて登場するたびに笑ってしまう。せっかくコメディとしてとても見どころのある作品なので、各所もう少しリアリティを持って女性総理とその夫という物語を描いたら、もっとずっと大きく問題提起をする作品になったのではないかと思う。

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シネプレックス旭川

シネプレックス旭川

住所:旭川市永山12条3丁目ウエスタンパワーズ内

TEL:0570-783-882

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