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近すぎて見えない 大切なもの

2分の1の魔法

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ⓒ2020 Disney/Pixar. All Rights Reserved.

幼いころに他界してしまってほとんど思い出のない父。幼いころからずっと一緒にいる破天荒な兄。女手一つで兄弟を育てている肝っ玉母。おとなしくて引っ込み思案な主人公とそれを取り囲む家族。この既にいない父さんが生前残していった子どもたちへのプレゼントをきっかけに、兄弟の大冒険が始まる。

持っているのに使わないせいでサビついてしまっている能力、毎日顔を合わせてちょっと疎ましくさえ思う兄や母。少年は兄との冒険の中で、さまざまな人々を巻き込みながらその近すぎて見えていなかった大切なものを確かめていく。巻き込まれた人たちも、それぞれが日常の中で安きに流れたことによって見失っていた大切なものを取り戻していく。

主人公は真面目な少年で、やるべきことをノートにリストアップしている。達成したらチェックを入れ、できなければ横線を引いて消す。彼がこの冒険でやりたいことを書いたリストがどうなっていくのか。どのように達成されるのか、あるいはしないのか。それが大きな見どころと言える。

私はこれを4DXで観たのだけれど、空撮カメラの浮遊感、カーチェイスの迫力、雄大な景色の解放感などが大きく増幅されるのでお勧めです。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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次男である主人公は、父さんをほとんど覚えていない。その父さんから、十六歳の誕生日にと託されたプレゼントは魔法の杖であった。

作品世界では、魔法はかつて一般的に使われていたことになっている。しかし習得には修練が必要で、より簡便な科学の進歩によって次第に失われて行ったのだという。これが実は、この作品の大きなテーマになっている。習得に努力を要するものは面倒で、おなじ目的を達するのにより簡単な方法があるのであればそれでいいじゃないか。たしかに結果を求めるのであればそれでいいのだ。本来走るのを得意としていたケンタウロスが自動車に乗っても、勇ましく冒険者を激励していたマンティコアが己を忘れていても、翼をもったピクシーが飛ばずにオートバイに乗っていても、さしたる問題はない。ただ誇りのようなものは、失われているかもしれない。

この作品が描いているのは、近くにあるものは意外と見えない、ということのように思う。人はたいてい、自分の持っていないものに憧れ、渇望する。持っているものには気づかずに、ただ持ち腐れていたりする。毎日顔を合わせるぐらい身近な人のことを、わかっているつもりでいてちっともわかっていなかったりする。主人公の少年は、兄との冒険の旅を経てそういう近くて見えない大切なものをいくつも発見する。やはりさすがピクサーだなと思わせるのは、この途中で巻き込まれていく人々の存在だ。いろいろな年齢層、立場の人たちが、それぞれの「大切なのに見失っていたもの」を見つけて変わっていく。きっとその中に、見ている人の心に刺さるエピソードがあるだろう。

これはファミリー向けアニメーション作品で、子どもと一緒に楽しめる映画だ。しかし描かれている内容は、ある程度人生経験を積んできた大人の方に刺さるような気がする。大人として社会の中に生きていると、どうしても近くのものはなおざりになりがちだ。同じ目的が達せられるなら安きに流れることもあろう。この作品を見ると、そういう日常に些細なことを反省したくなる。

ピクサー作品はいつも脚本が素晴らしいけれど、今回も見事だ。主人公は魔法で蘇らせた父さんと一緒にやりたいことをメモ帳にリストアップする。物語の終盤で、このチェックリストの項目を一つ一つ消していく。どれも達成できなかったからだ。しかし。最後の項目を消そうとして彼は気づく。どの項目も全部、兄さんと一緒に達成していた。父さんがいなくなったあともずっとそばにいた兄さん。ちょっと疎ましいぐらいに思っていた兄さんは、いつも背中を押してくれたし、なにより自分のことを信じてくれていた。ほとんど覚えていない父さんよりもいつもそばにいた兄さん。

これは魔法で父さんを蘇らせるというお話なのに、結局最後、主人公は父さんとの対面を兄さんに譲り、自分は蘇った父さんに触れることもできなかった。でも彼は兄さんとの関係を再発見する。最初に思い描いたハッピーエンドとはまったく違う形のハッピーエンドなのだ。これにはもう舌を巻くしかない。

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