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巡る因果

クリード 過去の逆襲

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今や伝説級のボクシング映画『ロッキー』。そのサーガの新編である『クリード』シリーズももう三作目だそうで、時の流れるのは早いものだ。本作ではもう、主人公のアドニスは現役を退いて指導者側に回っており、彼の師であるロッキーは登場しない。

思えばこのシリーズは当初から、過去のロッキーシリーズのストーリーとリンクした物語になっていて、常に時を超えた因果の宿命を描いていた。本作ではアドニス本人の過去が悪夢を連れてやってくる。前作で因果を断ち切り、死闘の末に勝利を収めたアドニスは、結婚もし、子どもも生まれ、すっかりセレブとなって悠々自適の引退生活を送っている。そこにかつて兄弟のように繋がっていた幼なじみが現れ、安寧に波風が立つ。

ボクシングシーンはアニメ的な表現になっていて、ただならぬ緊張感、臨場感がある。一方でストーリーはこれまでの作品に比してシンプルであっけなく、少々物足りなさも感じる。本作はロッキーサーガの終わりを感じさせるものだが、伝説の最終章としては少々すっきりしないものになったような気もする。

エンドロールの後にアニメ作品があるのだが、唐突感が強くて呆気にとられた。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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前作で重い宿命を断ち切り、栄光を掴んだアドニス。彼の物語であるクリードシリーズが作品を続けるためには、栄華を手にしたアドニスを再び前線に引き戻さなければならない。本作はそこに、「まだ語られていない過去」を絡めてきたわけだが、脚本の各所に無理が生じているように感じる。本作にはロッキーが出てこないことも相まって、やはりこれまでの作品よりもだいぶ薄い印象を受ける。

本作で敵となるのはアドニスの幼なじみのデイム。兄のように慕っていた人物なのだが、過去のある事件をきっかけに、デイムは収監されてしまい、アドニスは逃げ延びる。デイムは20年刑務所にいたことが語られるのだが、本編で語られる回想シーンを見る限りでは、刑期が20年にもなる罪状には見えない。実際に暴力を振るっていたのはアドニスであり、デイムは相手の仲間に囲まれてしまったアドニスを助けるべく、拳銃で脅しただけだ。ここで実際に発砲して相手を殺したりしていれば20年の刑期も頷けるのだが、どうも中途半端な設定に見える。

デイムとの再会で日常を脅かされたアドニスは、この因縁を断ち切るため、タイトルマッチの場でデイムと対戦することを決意する。ここでこれまでのクリードと同じ筋書きにハマるのだが、本作はその因縁がシンプルであり、かかわる人物も少なく、ストーリーの深みがあまり感じられない。加えて、誰もが予想する通りの展開でハッピーエンドに繋がり、取ってつけたような「幸せ」なラストシーンをどこか冷めた目で見ざるを得ない。

そう感じてみて、やはりクリードシリーズにとってロッキーの存在は非常に大きかったのだと思わされる。このシリーズにおいてロッキーはあくまで脇役であり、主人公はアドニスだ。しかし過去の二作はロッキーを中心とした人物関係の因果が語られており、複雑さがあり、歴史があり、深みがあった。本作はロッキーが登場しないことによって純粋にアドニスの物語になったのだが、とたんに奥行きが乏しくなった印象は否めない。

本作は主演のマイケル・B・ジョーダンが監督も務めたことで話題になっているが、エンドロール後に追加されている意味不明なアニメ作品といい、彼がこの「クリード」というシリーズをどうしたいのか、その意図がわからない。

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