身近にある施設や商品、催し物など様々な仕事の舞台裏に、ライナーの編集部が密着しました
気になるあの場所へ潜入!

旭川市消防団
旭川市東光27条8丁目 旭川市総合防災センター3階
TEL 0166-74-3249
(旭川市消防本部総務課消防団担当)
「地域の安全と安心を守る」という理念のもと、火災や風水害などの自然災害への対応や、消防・防災活動を行う組織だ。非常勤特別職の地方公務員で、旭川市の条例では性別や職業に関係なく、市内在住の18歳以上であれば誰でも入団できる。地域社会の安全を守るために、なくてはならない存在だ。
縁の下の力持ち 消防団員の実態に迫る
9月1日の防災の日をきっかけに、自分の防災意識についてぼんやりと考えていた。そういえば、住宅街などにポツンとたたずむ小さな消防施設が、消防団の詰所という認識はあっても、実のところどのような組織なのかまではあまり知らずにいた。私たちの日々の安全を陰ながら守る消防団は、一体どんな人達なのだろうか。団員の活動内容や日常など、そのウラ側へ、いざ密着。
今すぐできる地域貢献 消防団の仕事とは

旭川市消防団は35の分団で構成され、合計で600人を超える団員が所属している。それぞれ本業の仕事をしながら活動しており、会社員や自営業、学生など、職業も世代も幅広い。普段は防災を呼びかけるチラシを配ったり、啓発イベントを実施したりと、地道な活動で市民の防災意識向上に重要な役割を果たしている。有事の際は消防士とともに現場へ出向き、水害時には土のうを積み上げ、火災の場合は周辺の警備を担うほか、防火服を着て消火活動に参加することもある。言うまでもなく危険を伴う作業のため、日頃から訓練を重ね、いざという時のために各地で備えているのだ。
なんだか厳しく過酷でハードルが高いイメージがあるのだが、興味があれば誰でも気軽に応募してほしいと、消防本部総務課の担当者は笑顔で歓迎ムード。果たして、その言葉を真に受けてよいものか。その実態を確かめるべく、2人の団員に話を聞いた。
二足のわらじで活躍 意外と身近な団員たち
神居古潭にある第18分団の福井さんは、入団12年目のベテラン女性団員。実家の農家にUターンした際に、分団長の父に誘われて入団したという。付近のスキー場などにドクターヘリが降りる際、安全確保のための警備などを担っている。団員はみな昔からの顔馴染みで、親戚のような雰囲気とのこと。筋金入りのB’z好きということと、よく笑う朗らかな人柄に、早くもお堅いイメージが覆された。

団員歴6年の石川さんは、飄々としたキャラクターとは裏腹に、昨年の訓練大会で全道優勝した実力の持ち主。技術向上を目的に、ポンプ車の操法などを競う大会で、旭川市消防団にとっては14年ぶりの快挙だった。月1回程度の訓練も大会前は頻度が増え、仕事との両立に苦労したと振り返る。だが、全国大会を経験し、もっと上手くなりたいと意気込みを語ってくれた。「活動を通して自分の防災意識も高まり、身近な人にも伝えることができる」と、自身の変化を語る。ただ、「放水は水圧がすごくて10秒が限界。本職の方、リスペクトです…」と、20代ならではの率直な感想も聞くことができた。

かっこいいから続ける 不純な動機も原動力
誰もが熱い思いをもって入団するわけではなく、気軽に参加する人も多いという。福井さんも石川さんも「自分たちのまちは自分たちで守るという気持ちはありますが、それは消防団に限らず当たり前のこと」と話す。動機はさまざまだが、根底には「かっこいいから」という理由がありそうだ。活動服姿を子供が褒めてくれるからというお父さんや、職業を消防士だと子供に思い込ませていたという人もいるらしい。石川さんは「ポンプ車がかっこいいんです」と目を輝かせていた。ポンプ車にはすべて名前があり、第28分団は疾風(はやて)、第18分団は潭竜(たんりゅう)という。確かに、相棒のように呼びたい気持ちにかられた。

活動はボランティアではなく、訓練や出動に応じて報酬があり、退職報償金や療養補償なども支給される。人との繋がりができたり、成長を実感したりと、大人になると減っていく喜びも感じられそうだった。団員数は減少傾向だが、まちを守っているという実感は、なかなか得られないもの。旭川の最高齢団員は78歳とのこと。興味があるなら、今が始めどきかもしれない。
さらに深部へ ルポ・あれこれ
潜入!第28分団の詰所へ

国道39号線沿いにある詰所で、緊急時にはここに団員たちが集合する。壁には所狭しと賞状が飾られ、今までの功績を垣間見ることができた。たゆまぬ努力の結果が、市民の安全に繋がっている。
日々、勉強を怠らず。講習会もやってます

消防職員が講師となり、こうした講習会を定期的に開いている。この日は木曜の夜であったが、多くの団員が参加していた。仕事後のひと踏ん張りに、頭が下がる思いだ。
防災センターには、はたらく車が満載

訓練などを行う防災センター内には、ごくごく当たり前のことではあるがたくさんの緊急車両が控えていた。巨大なシャッターを開けて出動する姿は、まさにピンチを助けるヒーローそのもの。
編集後記
活動に対して特別な思いは特にないと、さらりと言ってのけるお2人の軽やかさに、気軽に応募してほしいという言葉の説得力を感じた。とは言いつつも、貴重品をすべてひとつのバッグにまとめ、緊急時に備えるようになったという石川さんと、街中でも水利※が気になってしまうという福井さんからは、消防団としての立派な姿勢を感じざるを得ない。きっと、身近な人の中にも団員がいるはず。話を聞いてみれば、なにかが変わるだろう。
※消防活動における消火用水源の総称
約2年に渡る連載でしたが、今回で最終回となります。
ご愛読いただきありがとうございました!