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ファンタスティック4の名を冠した作品はいくつかあるが、本作はその続編ではなく、まったく新しい世界線でのリブート作品である。本作は世界観がレトロフューチャーに徹しており、1960年代っぽい地球を舞台に、次元を超えて超人化したヒーローを描いている。あえて現代的にはアップデートせず、当時の未来像を忠実に映像化している点が特徴的である。ちょうど1970年の大阪万博がそのままスクリーンに蘇ってきたような印象で、これが今の感覚からすると少々チグハグに見えるものの、新鮮に感じる。
この作品はマーベル・シネマティック・ユニバースに含まれるようで、ここに登場するファンタスティック4は、今後のアベンジャーズに絡んでいくことになるようだ。それを考えるとスマホも光ディスクもない1960年代のような世界にしてしまったことによる齟齬は生まれないのか、といった懸念もあるのだが、かえってどのようにまとめるのか目が離せなくなったとも言える。
各所でトンデモな部分が引っかかったりもするのだが、往年のアメコミヒーローものとしておおらかに受け止めるのが良さそうだ。ファンタスティックでありさえすれば万事問題ない。(映画ライター・ケン坊)
ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム
この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。
過去の作品とは関連のない、まったく新しいファンタスティック4である。これまでの作品の中でもっとも、原作の時代背景を意識した絵作りになっているような印象を受けた。現在の感覚で見るとふた昔ぐらい前のレトロ・フューチャーという感覚で、小さなブラウン管のテレビも、腕時計型のデバイスも、音声を記録する黄金のレコードも、フィクションの中にあってさえ大きな違和感を伴って感じられる。このような世界観でシネマティック・ユニバースとしての齟齬は発生しないのだろうか。次のアベンジャーズ作品でファンタスティック4が絡んでくるようなので、どのようにしてこの問題を解決するのかはとても興味がある。
ストーリー面では、本作には重要な敵であるギャラクタスが登場し、過去作にも出てきたシルバー・サーファーも登場するが、ストーリーそのものは原作とは大きく異なっている。また、作中でフランクリン(リードとスーの息子)が誕生するのだが、この誕生シーンは映画史に残るだろう。おそらくブラックホール天体の巨大な重力でスイングバイをしながら出産する、というシーンはこれまで一度も映像化されていないはずだ。おそらく今作で誕生したフランクリンが、今後のファンタスティック4とアベンジャーズとのつながりにおいてそれなりに重要な役割を担うことになるのだろう。アイアンマンとスティーヴ・ロジャースが退場した後、アベンジャーズはいまいちインパクトに欠ける状況が続いている。今回のファンタスティック4を見た印象では、彼らもまたその穴を埋めるほどではあるまい。フランクリンがそのような位置を担えるのかと言えば甚だ疑問ではあるが、迷走感のある今のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)がこれからどうなっていくのか、注目していきたい。目が離せないというほどエキサイティングな要素がない点は少々寂しくもあるのだが、それでもなお、やじ馬的な興味を惹くなにかはまだあると感じる。