1. ライナーウェブ
  2. ニュース&記事
  3. おでかけ
  4. ショウタイムセブン

ジャーナリズムのあるべき姿とは

ショウタイムセブン

©2025「ショウタイムセブン」製作委員会

報道番組の生放送を舞台に、爆弾テロ犯とのリアルタイムのやり取りを描くスリリングな作品。少々突飛な事件ではあるもののいつ何が起きてもおかしくない緊張感がそこかしこにみなぎっている。爆弾テロ犯が生放送のメディアを狙ってメッセージを流すという、いわゆるエンタメサスペンス作品なのだが、時勢柄、巨大なテレビメディアへの不信感、大義を失った報道の虚無感、タレント化するジャーナリストの無能感など、現在の世情への問題提起としてメッセージ性が強調されて響く。報道メディアとはなんなのか、ジャーナリズムとはなんなのか。その誇りとは。名優阿部寛による主人公の機微の表現が、巨大権力の暴力性とジャーナリズムの本質を暴き出す。

登場する犯罪の実現可能性など、リアリティに関しては「あくまでエンタメ」という出来栄えなのに、それを飛び越えてこの作品が訴える問題提起は強く響く。公開時期が少し違ったら、この作品は単なるサスペンス映画として消費されたのかもしれない。僕らはこれ以上ないタイミングでこの作品を受け取ったと言える。これはヒリつくような「報道」の緊張感を垣間見る、極めて現代的な映画である。(映画ライター・ケン坊)

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

もっと読む

テレビ局が報道機関としての誇りを失って久しい。もはや「報道」というものに誰も期待しておらず、その存在意義は無いに等しい。テレビというメディアだけを頼っていると真実などなに一つわからない。本作はそんな現代のテレビメディアに対し、そんなことでいいのかと反省を促すような作品である。報道番組のメインキャスターを降板し、そのテレビ局系のラジオのパーソナリティになっている主人公。彼の元に爆弾テロ犯から電話がかかってくるところから物語が始まる。犯人の主張と主人公の経歴に作品の物語が隠されている。国家権力と巨大資本と報道メディア。この三つが手を結ぶと真実などというものは闇に葬られ、どんな情報操作も可能になるという事案が描かれる。実際問題、現実にも同種のことは既に起きているだろう。報道メディアに中立性など一切なく、スポンサーには頭が上がらないし、コンプライアンスが崩壊しているだけでなく、一般常識も通じない。そのようなメディアと誇りなきジャーナリストへの怒りが、犯人を凶行へと駆り立てる。

本作は「ショウタイムセブン」という架空の報道番組を舞台にしているのだが、この番組の若い女性キャスターが、堕落したテレビを象徴する人物として描かれている。物語のラスト付近で、彼女はあろうことか「たかがテレビですよ」と叫ぶ。たかがテレビ。当のテレビというメディアに出演し、報道番組でキャスターを務める人物が発するこの自己矛盾の極致みたいな言葉。これこそが、この作品で最も描きたかったシーンなのではないかと感じた。番組を作る中核にいる人物さえ、自分たちの作っているものに価値を感じていない。「たかがテレビ」と思っている人たちの作るテレビ番組。そんなものになんの価値があるというのか。この作品は現在のテレビメディアが抱えているこの責任放棄の姿勢を糾弾する作品であるとも言える。

そして極めつけに、この作品を作っている製作陣にも、テレビ局が名を連ねている。絡まりあう自己矛盾が、誇りも責任感もまったくないテレビというメディアを物語っている。

関連スポット

シネプレックス旭川

シネプレックス旭川

住所:旭川市永山12条3丁目ウエスタンパワーズ内

TEL:0570-783-882

永山/アミューズメント

イオンシネマ旭川駅前

道北最大級の8スクリーン1,200席

イオンシネマ旭川駅前

住所:旭川市宮下通7丁目2番5号 イオンモール旭川駅前4F

TEL:0166-74-6411/駐車場:900台

宮下通/アミューズメント

  • 駐車場

関連キーワード

シネマの時間 バックナンバー

国宝
奇跡の映画だ。こんなにも凄みに満ちた作品が完成したこと自体に感動する。三時間もある上映時間が瞬く間に過ぎ去る。 本来世襲制である歌舞伎の世界を舞台に、血のつなが... (6月13日)
ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング
ある意味アクションシリーズの必然でもあるのがなんらかの要素のインフレ。バトルものは強さがインフレし、ドンパチものは飛び交う弾薬の数がインフレする。かくして本シリ... (5月30日)
かくかくしかじか
恩師と言われて思い浮かぶ顔はありますか?もしYesであれば、きっとそれはとても幸運なことなのだろう。日本に生まれ育つと多くの先生と出会う。学校の先生はもちろんの... (5月23日)
花まんま
両親を相次いで亡くし、兄一人で育てた妹が結婚する。そこに、妹が別の人の記憶を持って生まれてきたという設定が付与されて、ちょっと特殊な形で「家族」を描いた作品であ... (5月2日)
アマチュア
弱みを克服するか、強みを伸ばすか。教育でも、組織のマネジメントでも、自己研鑽でもしばしば考えさせられるテーマである。本作はCIAで暗号解読のスペシャリストとして... (4月18日)
PRインターネット広告掲載はこちら »

ニュース / キーワード

ようこそ、ゲストさん

メールアドレス
パスワード

※パスワードを忘れた方はこちら

はじめての方はこちら

アカウント作成

ライナー最新号

2025年6月13日号
2025年6月13日号
東川のヤマチューンで アウトドアメーカーと コラボイベント
紙面を見る

ピックアップ

注目グルメ
注目グルメ
定番から新作まで ライナーが今注目する お店の味はこれだ!
シネマの時間
シネマの時間
映画ライター・ケン坊が語る新作映画とそのみどころ
外食チェーン
外食チェーン
人気商品ランキング上位3品をご紹介
味な人
味な人
北北海道で食に携わる人々の横顔をご紹介
つくろう旬レシピ
つくろう旬レシピ
プロの料理人が教える季節の食材を使った絶品レシピをご紹介
ものぴりか
ものぴりか
ライナーが集めてきた 地元の素敵な品々を紹介します
不動産情報
不動産情報
不動産・リフォーム等 住まいに関する情報を公開中
クーポン
クーポン
お得なクーポンを公開中
お知らせ
お知らせ
お店・スポットの お知らせ
ラーメンマップ
ラーメンマップ
ラーメン食べたいなぁ そんなときは専用マップで探してみよう
開店・移転・閉店
開店・移転・閉店
旭川市・近郊エリアの新店や創業などの話題。情報提供も歓迎!
星占い
星占い
6/10〜16の星占い

ページの最上段に戻る