昭和喫茶探訪 21
固めのプリンで験担ぎ
書初めはカラメルソースで
珈琲と食事 あると
気の緩みにつけ込まれたか、大晦日に発熱し、文字通りの寝正月を過ごした2023年も、すでに1カ月が終わろうとしている。今年は健康第一を目標に掲げ、1年を過ごしたいと切に願う今日この頃。サラリーマンの体調管理といえば、うがい、手洗い、適度な息抜き。喫茶店にはお世話になるだろう。
風邪をひくとゼリーが食べたくなる。火照った喉を通る時の冷たい感覚と、すこし嘘くさいフルーツの甘さがなんかいい。39度を超えると余裕もなくなり、ここぞとばかりにわがままになる。4個入りのゼリーを1人で全部食べるのも、その時ならではの特権だ。正月気分もすっかり抜けた1月下旬。ぼちぼち息抜きが必要な頃だ。体調管理こそ大事な案件、と自分に言い聞かせながら喫茶店初めとした。
今から40年ほど前、「喫茶室みうら」として現オーナーのお母さんが営業していたお店で、建物はお父さんが建築したそう。年代は感じるが、古さを感じさせない店内。普遍的な魅力と、後世にまで残るものづくりへのこだわりが詰まっている。この雰囲気に浸りたくなり、固めのプリンと珈琲を、追いカラメルソースとともに注文した。シロップ漬けのいちごが乗った、ぼってりとした愛らしいフォルム。ほろ苦いカラメルとしっかりとした食感。元気な身体には、ゼリーよりプリンの方がしっくりくる。いちごはどのタイミングで食べようか。ひとまず、崩れ落ちないよう慎重に食べる。ころりと落ちたその時を、一番の食べ頃としよう。くだらない駆け引きだが、こんな時間こそが贅沢だと思う。
眉間にしわを寄せながらパソコンに向かうより、顔をほころばせながらカラメルをかけていたい。カウンターの死角の席で、ほうれい線にひっそりと浅めのしわを刻んだ。(文/武山 勝哉)
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東光の古き良き昭和の香り漂う喫茶店
住所:旭川市東光5条2丁目4-28TEL:0166-56-8545/定休日:当面の間火曜・水曜
SNSでご確認ください/駐車場:あり
東光/カフェ・喫茶
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