身近にある施設や商品、催し物など様々な仕事の舞台裏に、ライナー編集部が密着しました
気になるあの場所へ潜入!

30年以上続く、北海道内でも歴史のあるライブハウス。地元のバンドやラッパーなどのライブのほか、音源のレコーディングや貸しスタジオとしても利用されている。1人4,000円からライブに出ることができ、初心者も大歓迎。収容人数は300人ほどでステージとフロアも近いため、ホールなどの大きな会場とは違う臨場感が味わえるのも魅力だ。
共に作る最高の一瞬 あのステージの舞台裏へ

旭川のシンボル、買物公園沿いにあるライブハウスで、週末になるとプロ・アマ問わずジャンルも多様なライブが行われている。歓声がうずまく満員のフロアで汗だくになり、その日のライブの余韻に浸りながら帰路につくまでが観客としての視点だ。では一体、その瞬間ができるまでになにが起きているのか。リハーサルから潜入し、裏方の仕事を取材した。ライブハウスのウラ側へ、いざ密着。
最高の音作りのためにコミュニケーションが要

夕方からのスタートに向けて、リハーサルは昼頃から始まる。取材日はとあるメジャーアーティストの北海道ツアーで、地元のバンドを含めた6組が出演。与えられた時間は各々30分しかないため、会場内は忙しない雰囲気に包まれていた。

本番に向けて、機材の配置やセッティング、照明の演出などを確認していく。現場を仕切るのは、VUN(ブン)さんの愛称で親しまれる代表の菅原謙さん。限られた時間の中でそれぞれが表現したいことを引き出すには、機材の扱いはもちろんのこと、出演者との密なコミュニケーションが大事と話してくれた。事前に受け取る音資料だけでなく、バンドやアーティスト自身のたたずまい、音楽だけではない趣味の話など、他愛もない会話から言外に漂うムードを汲み取り、表現したい音の解像度を高めていくのだ。「ライブの打ち上げに誘われることも多いから、二日酔いのメンテナンスも大変なんだよね」とVUNさん。アーティストからの厚い信頼が感じられる一言が印象に残った。
ステージ裏の異空間 いざ、憧れの楽屋へ

ライブハウスのウラ側といえば、出演者だけが入ることが許される楽屋は外せないだろう。ステージの袖から楽屋に繋がる通路があり、その壁には所狭しと今までの出演者たちのサインが書かれていた。薄暗い通路を抜けて楽屋の扉を開けると、タバコの匂いが入り混じった独特な空気も相まって、なんだか見てはいけないものを見ているような気持ちに。ライブの直前は、さらに緊張感でいっぱいになるのだろうと容易に想像ができた。
リハーサルを終えたバンドが、数時間後のライブに向けてミーティングをしている姿を見かけた。今日のライブのこと、SNSでの戦略や物販のこと、さらには今後の方向性など、空いた時間を使って熱い議論をかわしている。サブスクリプションサービスが普及し音楽はより身近になったが、物質としての実感がないため人が作っているという当たり前のことを忘れかけている気もする。観客として見ている華やかな世界のウラ側を覗くと、日常にあふれる音楽の尊さに気付くことができた。
気の抜けない繊細な作業 緻密に作り上げる熱狂
定刻通りの午後6時半、ついにライブがスタート。観客の後方で、PAを担当するVUNさんが真剣な表情でステージを見つめていた。
いくら入念にリハーサルをしても、観客が入ると音の鳴りが変わったり、思いがけないトラブルが起きたりもする。出演者たちの手元や目線といった一挙手一投足を注視し、困りごとがないか気を配る。また、最大限のパフォーマンスを引き出すため、音のバランスなどの微調整を行う。ミリ単位の調整でライブの完成度が変わるほど、デリケートな作業だ。「2曲目までは特に気が抜けない。経験を積み重ねて、テレパシーみたいなものを感じられるようになったね」と笑う。
ライブは生モノで一度限り。生身の人間が作る一瞬の美しさや感動は、こうした裏方の支えによって作られていた。
※ PA=演奏中に音の補正や調整を行う作業のこと
さらに深部へ ルポ・あれこれ
コロナ禍を支えた相棒

2019年に里親として引き取ったワンコのノエル(♀)。コロナ禍という辛い時期を一緒に乗り越え、今やカジノドライブのマスコット的存在だ。事務作業中のスタッフの膝に乗ってまったりとする姿が愛らしい。
楽屋とステージの境目、魔法がかかる瞬間

始まる前の歓声やお客さんの熱が、この場所まで伝わってくる。この階段を上ると、そこはもうステージの上。ここを抜けた瞬間、空気までもガラリと切り替わるような気さえしてくる。
地元のバンドは集客にも貢献

地方のアーティストのツアーなどの場合、地元で日々活動し、ファンが付いているバンドも一緒に出演することで集客に繋がる。ステージ上での激しいパフォーマンスとは裏腹に、お堅い職業に就いている人も多いとか。
編集後記
ライブはステージの上だけで作られるものではないと、改めて実感する一日だった。出演するアーティストもスタッフも、ライブはいつも試合のような緊張感。終わったあとの打ち上げで飲み過ぎてしまうのも当然だろう。ひと昔前と比べるとバンドも減り、ライブハウスに足を運ぶ人も少なくなったという。たとえ知らないバンドでも、全力でなにかを表現する姿を目の当たりにすれば、きっとなにかを感じるはず。軽くお酒を飲みに行く感覚で、ふらっと立ち寄ってみてほしい。











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