築100年をめざして
郷土愛が残す廃線駅

幌加内町のほぼ中央にある添牛内地区で、開業から91年後の平成7年に廃線となった木造駅舎「添牛内駅」が先月、修繕工事を終え、当時の姿に生まれ変わりました。地域住民がクラウドファンディングなどで資金を準備し、100年の存続を目標にゆるやかな活用を模索しています。

添牛内駅は、幌加内から朱鞠内湖を経由して名寄本線に繋がる深名線の駅で、昭和6年に開業。かつては駅の周りに商店街や旅館が立ち並び賑わいましたが、利用者数の減少により平成7年に廃線となりました。管理者が亡くなった後も有志で草刈りや清掃、除雪などを行ってきましが、老朽化により屋根や壁は破損、基礎もボロボロになりいつ倒れてもおかしくない状態に。そこで2年前、町内の3人が保存会を立ち上げ、築100年に向けた修繕プロジェクトがスタートしました。

代表を務めるのは、添牛内でそば店「霧立亭」を営む山本昭仁さんです。「地域の方に聞くと、みんな駅に愛着を持っている。それで徐々に使命感のような気持ちが湧いてきたんです」と笑顔を見せます。SNSで情報を発信し、添牛内にゆかりのある人との交流を深めながら、今年7月に修繕費用を集めるためクラウドファンディングを開始。すると鉄道ファンだけでなく、深名線を利用していた人や全国各地にいる元住民から、目標を大幅に上回る支援が寄せられました。山本さんは「改めて残していくことの重要性を感じた」と振り返ります。そして先月、基礎や土壁の修復、屋根の修理など約3カ月の工事を終え、今月から公開が始まりました。

「人に頼るのが得意なので、本当にみなさんのおかげ。10年ずつ無理せず残していければ」と謙虚な山本さん。現在は中には入れませんが、「ゆくゆくは構内でそばを食べるイベントができれば」と展望を語ります。計画はまだスタートしたばかり。地域住民が守る歴史的な建物を、ふらっと立ち寄って見てみては。問い合わせは保存会(TEL.0165-37-2233)へ。