- 第24回建築賞を受賞した「藤田邸」
- 特別賞の「鈴木邸」
旭川の歴史的建物の保存を考える会(軽部望会長)は、第24回建築賞と特別賞を発表しました。建築賞には旭川市宮下通の「藤田邸」が、特別賞には比布町の「鈴木邸」がそれぞれ選ばれました。
建築賞は、旭川と周辺の歴史的建物を顕彰し、歴史的価値の周知と地域文化の継承を目的に1998年に設立されました。これまでに、旧宮北邸をはじめ旧岡田邸や市民活動交流センターCOCODEなどが受賞しています。
建築賞の藤田邸は、昭和5年建築の個人住宅。旭川区(当時)初の酒造業者「丸五藤田合名会社」の藤田長次郎社長の自邸として、上川神社の旧敷地内に建築されました。2年間天然乾燥させた材木を使った建物は非常にしっかりしていて、現在も建設初期の状態をほぼ保っています。和洋折衷様式の建物は優雅でかわいらしく、屋内には藤田邸の象徴とも言えるペチカが堂々とした様相を示しています。作家の三浦綾子さんのデビュー作「氷点」の主人公の家のモデルになったことでも知られ、朝日新聞の連載第一回には、その外観が挿絵として描かれています。
特別賞の鈴木邸は、明治の入植期に比布駅裏に建造された個人住宅。何度かの増改築を経て、昭和3年に現在の形態になりました。外壁は洋風建築の石積みを模したトタン張りで、縦長の上げ下げ窓やバルコニー(現存せず)など、モダンでレトロな大正ロマンを感じさせるデザインです。
軽部会長は「藤田邸は、地元の文学とも関わりのある初の建築賞。どちらも当時の生活様式や職人の確かな技術、息遣いが伝わってくる」と評価しています。