探偵はBARにいる3
©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会

燃やせよ、いのち

 待ってました、と思わず声に出そうになるあのコンビの再来。前作から4年、久々に見るコンビにホッとする。今回の事件で初めて登場する顔ぶれも豪華キャストだが、おなじみの面々もおなじみの風合いで登場して楽しませてくれる。特に待望していたというわけではなかったのに、観たら「おかえり!」と言いたいような気分になった。

 本作では複雑な過去を持つ謎の多いヒロインが登場し、込み入った事件と同時に彼女の人物像を丁寧に描く。このヒロインを北川景子が際立つ美貌で好演する。回想シーンに登場するどん底状態と現在のギャップも見事で、深い何かを抱えた複雑な人物をにじませる。

 探偵の相棒である高田についても今まであまり描かれていなかった部分が細かく描かれていたり、無敵を誇る彼を脅かす強敵も登場するなど、シリーズのファンを楽しませてくれる。

 このシリーズは普段映画を見ない層も視野に入れているためか、主人公のモノローグやフラッシュバックを多用して、いわゆる行間を逐一全部説明する。この点のみ、少々蛇足なのではないかと毎回感じる。

 エンドロール後の映像を見ないと大事なところを誤解する可能性があるので必ず最後まで見ましょう。

シネプレックス旭川イオンシネマ旭川駅前ディノスシネマズ旭川で上映中

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 切ない結末だ、ということが予告で言われていたわけだが、ヒロインに悲しい過去をこれでもかというぐらいに背負わせ、酌量を誘うようになっている。どんなに白を塗り重ねたところで、一番上に黒を塗ればそれは黒になるわけだが、黒を見せてから、下にこんなに白が塗られていたんですよ、とやると最初に見た黒さえ薄まって見える。

 事件の真相を暴くことよりも、ヒロインの深層を描くことの方に重点がある。その重要なヒロインを北川景子が演じているわけだが、女優の手腕を十二分に活かしたキャスティングだと感じた。美しいが大きな影を背負っていて、急な変化を遂げた人物。幼稚な発想で行動するが、根っこには深い愛を持っている人物。愛深きゆえにどこまでも哀しい人物。その複雑な人物を好演し、クライマックスで見せる笑顔は悲劇的幕切れにこれ以上ない華を添える。

 本作のもう一つの軸は高田である。これまであまり描かれていなかった、探偵と一緒にいないときの高田に触れている。彼にもプライベートがある。そもそも本作の事件は彼が後輩からの依頼として持ってきたものだったし、大学での彼の姿なども描かれる。彼の本業は探偵の助手ではないということが、今更改めて思い出されるようになっている。おそらく探偵自身も忘れていたれあろう高田のプライベート。探偵はとびきり危ないヤマに飛び込むに際し、高田をクビにする。高田を想うがゆえの決別。

 ラストシーン、いつものBarから出てきた二人は、ごくあっさりと背中を向け合い、反対方向へ歩き出す。エンドテロップがスタートし、探偵は振り返って高田の背を見送る。高田は振り返らない。実に彼ららしい別れだ。シリーズのラストエピソードに相応しい印象的なラストシーンと言える。

 その余韻を楽しみながらエンドロールを見送ると、エンドロールの後に追加の映像が…。

 最高のオチが用意されていた。センチメンタルな気分をひっくり返して笑いに引き戻す最高のオチだ。

 きっと探偵は今夜もいつものBarにいる。

2017年12月8日