三度目の殺人
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命は選別されている

 豪華キャストによる法廷ドラマ。真相を追うというサスペンス的要素もあるが、それ以上に登場人物たちの織り成すドラマで魅せる作品に仕上がっている。キャストは本当にもう見事な人を配置してあり、その芝居だけですでに十二分に見応えがある。

 役所広司の演じる被告人を、福山雅治の演じる弁護士が弁護して裁判に臨む、というのが大筋のストーリーだが、主体は法廷でのやり取りというわけではなく、その準備段階での弁護人と被告人の対話の部分にある。弁護人は当初弁護のための材料を探すために被告人を聴取するわけだが、被告人が持つ不思議な魅力に引き込まれ、次第に真相を追い始める。

 事件の真相を明らかにすることではなく、被告人を弁護することを目的とした聴取、調査が行われる。この点が普通のサスペンスと大きく異なる。求めているのは真相ではなく被告人の真意のようなものになっていく。なかなか真意のわからない奇妙な被告人を役所広司が好演している。彼の真意がどこにあるのか、というのが物語のキーになる。

 弁護人と被告人が交わす面会室での会話が作品の根幹を成しており、この会話だけで大きく物語をけん引していく。その脚本と芝居の見事さをぜひ堪能していただきたい。

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ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 冒頭で事件が起こり、被疑者が自白して被告となっている状態から物語が始まる。つまりサスペンスとしては、「犯人」についてはほとんど疑いのない状態からスタートすることになる。もちろん犯人捜しをするような話ではないわけだが、この被告人の証言がどういうわけか二転三転する。弁護人としては非常にやりづらい状況に陥る。そして、罪を軽減しようと奮闘する弁護側と、なぜかそれをはぐらかそうとする被告人のやりとりから、この被告人の真意を探るという点に重点が置かれている。いわゆる刑事ドラマのような犯人探しでもなく、コロンボみたいに犯人が分かったうえでトリックを暴くのでもなく、弁護側と検察側の戦いを描く法廷モノでもない。比較的斬新な切り口の作品と言える。

 発生した事件だけは動かない事実としてそこにあるわけだが、それを取り巻く思惑のようなものは見方を変えれば全く違う様相を見せる。その見せ方が巧みなので、同じ事件を見ているのにどんどん違ったものに見えてくる、という状況を観客も体感させられることになる。

 最終的にちゃんと落ち着くべきところに落ち着き、真相らしきものは提供される。しかし観客は真相を得られたものの、作中の法廷では、本当の真実を知っていたものはほとんどいない。そのまま判決は下り、隠された真相は隠れたまま闇に葬られることになる。この作品を見ると、こうしたことは現実にいくらでも起こっているのだろうと思える。特に事件の当事者でもない位置から見た場合、手に入る情報などというものは真相からかけ離れたものかもしれないという不安を掻き立てられる。

 葬られた真相がどんなものだったのか。本当の悪は裁かれたのか。本当は重要かもしれないものを伏せたまま、司法の船は今日も進む。正義とは何か、司法とは何か、そういったことを改めて考えさせられる作品であった。

2017年9月19日