メッセージ
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あなたの人生の物語

 原作のタイトルが「あなたの人生の物語」であり、映画の原題は「ARRIVAL」であり、邦題が「メッセージ」であるというかなりややこしい経緯を持つ作品。言語学をテーマにしたSF短編が原作だが、もう20年近く前の作品なのに非常に新鮮な印象を受ける。特にこの映画化は実にうまくいっていて、映像ならではの見せ方で大きな仕掛けを演出している。

 本作はエンドタイトル(映画のラストにタイトルが表示される手法)を採用しているのだが、最後にシンプルなフォントで描かれる「ARRIVAL」というのがこの映画の原題であるということを知らないと疑問符の渦の中に放り出される可能性がある。それがタイトルだと知っていると実に秀逸であることがわかる。

 原作のタイトルと原題と邦題が一見バラバラだが、見終えるとどれもなかなか良いと感じられる。個人的には映画の演出とも相まって、映画版の原題が最もしっくりくるように思う。大きな仕掛けが作品の核を成しているのでここで内容に触れられないのがもどかしいが、原作のエッセンスをうまく抽出し、巧みに跳躍して見事に着地する。重箱の隅を気にせずに作品に乗って行けば心地よい驚きへと運んでくれる。

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ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 扱う言語が思考を左右する、という発想が根底にある。その上で、宇宙人とコミュニケーションを取るために彼らの言語を理解すると思考が変化し、現在の人間とは違うものに進化する、というような方向へ進むSF作品である。ネタバレありということでけっこうなネタをバラした感じがするかもしれないが、実はこの程度のことはネタバレのうちには入らない。この作品にはほかにもっと大きな仕掛けがしてある。

 そのもっとも大きな仕掛けの部分は、映像ならではの見事な演出で表現されていて、風景の美しさも相まって心地よい仕上がりだ。

 原作ではもっと言語学的な側面が詳しく描写されていてそこに作品の主軸があり、それが少々難しい印象になっている部分もあるのだが、映画はそれをうまい具合に薄め、それでいて内容としては薄くならないように工夫されている。タイトルのつけ方にしても賛否はあるだろうが、決して安直なものではなく、よく考えてつけられているのだろうと感じる。映画の原題である「ARRIVAL」というのは、映画を見終えてラストシーンの後にすっと表示されたときにとてもしっくりくる、よくできたタイトルだと思う。ただ、それをそのまま日本に持ち込んだとしてもおそらくうまくいかない。そういう意味でも「メッセージ」という邦題は、見事とは言わないまでもよく練られていると思う。「メッセージ」という言葉を軸にして作品を振り返ると、この作品にはさまざまなところで「メッセージ」が描かれている。誰から誰へのメッセージが最も強く響くか、それは見る人によっても異なってくるだろう。見方によってさまざまに楽しめる良作である。

2017年5月26日