ゴースト・イン・ザ・シェル
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自分とは何か

 「攻殻機動隊」がハリウッドで実写化されるというニュースが飛び込んできて以来、おそらく多くのファンが期待と不安の入り混じった状態で待っていたこの作品。結論から言うと完全にファン向けに作られている。おそらく作っている人自身が「攻殻機動隊」の大ファンなのだろうという出来栄えだった。良くも悪くもターゲットは作品のファンという印象なので、「攻殻機動隊」そのものに全く思い入れのない人が楽しめるのかどうか少々微妙なところではある。

 一部思い切った改変をしているところがあるものの、それも含めて作品世界を壊してはいない。95年の「攻殻機動隊」、04年の「イノセンス」から印象的な絵を忠実に実写化しているし、川井憲次による音楽も活かされている。さらに吹き替え版では95年版の声優さんが吹き替えを担当しているなど心憎い。それもこれもすべてがファンに向けて作られているというのが本作の美点であると同時に大きな欠点でもある。

 作品のテーマは面白いがそれは原作にもともとあるもので、本作独自の意味のようなものがあるのかというとそれが少々薄いのは否めない。

 95年版を未見の人はぜひ、本作を入口として95年版もご覧いただきたい。

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ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 スカーレット・ヨハンソン主演で実写版攻殻機動隊と聞いたとき、それって「バイオ・ハザード」みたいな感じになるのでは?と思ったのだが、ふたを開けてみたら本作の主人公キャラクタの名前が「ミラ」で、マジかよ!と突っ込みたくなった。

 もちろん攻殻機動隊の主人公であるところの少佐の名前はミラなどではないわけだが、本作はそこに仕掛けがある。原作には無い設定を追加している部分でここは賛否が分かれそうではあるが、作品のテーマからはズレないように工夫されていて、逆に原作への愛を感じる。これを作った人は相当攻殻機動隊が好きなのだろう。

 冒頭からもうファン垂涎の映像にまみれている。思った以上に過去の作品を忠実に実写化していて、そこまで全く同じにやるのか、と思うような映像が次々に現れる。冒頭2分で「これは完全にファン向けだ」と感じるような出来栄えなのだ。

 その後も「攻殻機動隊」と「イノセンス」からいろんな映像をぶち込んでくる。ストーリーは全然違うものになっているのだが、そこに過去の作品の映像をうまい具合に絡めてあるのだ。そのため、「攻殻機動隊」と「イノセンス」のファンの人が見れば、「おお!」と思うような絵が随所に出てくるのだが、逆にこの作品で初めて攻殻機動隊に触れる人にはこれがどう映るのか、残念ながら私にはそれがわからない。

 当初から賛否のあった北野武による荒巻課長は、やはり荒巻課長のイメージとは少々異なるものの、これはこれで公安9課の課長という意味では合っていると感じた。北野武なのでヤクザの親玉みたいな感じではあるのだが、そもそも9課というのが曲者かつ強者の集まりなので印象としてこれはこれでアリという風に見える。

 原作と違う要素を織り交ぜつつ、それでも原作のテーマからはズレず、旧作へのオマージュにまみれた映像で組み上げられている本作。かなり良くできていると感じはしたものの、逆に95年版があまりにもすごいということを改めて思い知るきっかけにもなった。

 そもそも95年版「攻殻機動隊」や「イノセンス」を見たことがなくて本作を見に行く人というのがどのぐらいいるのかわからないが、もしそういう方がいたら、ぜひ本作を見た後で「攻殻機動隊」や「イノセンス」にも手を伸ばしてみてほしい。

2017年4月14日