シング
©Universal Studios.

どん底になればあとは上るだけ

 「お集りのすべての生き物のみなさん」という主人公の呼びかけがふるっている。いろんな動物たちが個性的なキャラクターとして登場するのはアニメ作品ならではだが、彼らが魅力的なのは身近にいるような肌触りがあるからだろう。その身近さを感じるキャラクターたちが、ショービジネスの大舞台を目指す。本作が面白いのは、主人公は傾いた劇場の支配人で、コンテストを仕掛ける側だという点だ。コンテストの出場者と同様に、あるいはそれ以上に、大きな夢を追っている。そこかしこに魅力的なキャラクターが登場し、それぞれがそれぞれのドラマを懸命に生きている。

 要約してしまえばきわめてシンプルなストーリーだが、登場するキャラクターや楽曲の魅力でしっかりと楽しませる。コメディとしてカラッと笑わせ、時にしんみりし、ハードなビートでスカッとし、突き抜ける歌声に震える。全身で体感するエンターテイメントは最高に楽しい時間をくれる。

 豪華なメンバーを惜しげなく配した吹き替え版も素晴らしいので安心してお勧めできる。この春、子供と一緒に見られる映画が粒ぞろいだが、音楽好きなお子さんなら本作の吹き替え版もぜひ候補に入れてほしい。

ディノスシネマズ旭川イオンシネマ旭川駅前シネプレックス旭川で上映中

ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 主人公は劇場支配人のコアラ。そしてその劇場で働いている唯一のスタッフとしてカメレオンのばあさんがいるのだが、このばあさんのキャラクタが濃すぎる。右目が義眼という設定になっていて、ことあるごとにこの目玉が飛んで行って騒ぎの種になる。もともとカメレオンなので残っている左目もどこを見ているかわからないようなことになっていて、彼女がどこを見ているのかは終始まったくわからない。

 この2人を中心に、彼らに勝るとも劣らない濃いキャラクタたちが登場し、それぞれの想いをステージに込める。もともとは「歌のコンテスト」ということでスタートするわけだが、次第にことの様相が変化していく。結局、審査に通って本戦へ進んだメンバーたちは、頂点を目指して競うのではなく、それぞれの想いをぶつけて互いに刺激を与え合い、ともにステージを作っていくことになる。単なるオーディション企画ではなくなった辺りから、作品の本質が見え始める。

 個性あふれるキャラクタと、きっと耳にしたことがある粒ぞろいの楽曲たち。演者は吹き替え版も含めて最高のエンターテイナーたち。見どころ盛りだくさんである。きっと「こいつが好きだ」と思えたり、「こいつ憎めないな」と思えたりするキャラクタが1人ぐらいはいるだろう。

 ちなみに僕は、とにかく子だくさんの豚ロジータママが楽しかった。25人の子供を持つママ、ロジータは歌を諦められない。そこでオーディションを受けて審査に通ったわけだが、家事をやりながら本番に向けた練習に参加するのが難しい。きっと子育てママさんなら共感できるところだろう。何かをやろうと思っても、そう簡単に身動きが取れないのだ。そこでロジータママは秘策を考える。これがもうあまりにもすごい。ぜひ劇場でご覧になって大笑いしていただきたい。

 そして吹き替え版の見どころは何と言っても内気な象さんミーナ。ミーナはシャイで人前に出ると何もできなくなってしまう女の子だが、歌うと超絶にすごいという人物。この吹き替えをMISIAがやっている。文字通り震えるような歌を披露しているので、これだけでも吹き替え版を見る価値がある。もちろんその他のキャストも見事で、「アナと雪の女王」にも負けないぐらい吹き替え版の満足度が高いのでお勧めだ。

2017年3月24日