本能寺ホテル
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織田信長に会ってみた

 ホテルのエレベーターが本能寺の変前夜の本能寺につながってしまい、本能寺滞在中の織田信長の前に未来人現る、という事態が巻き起こる。そんな架空歴史タイムスリップSFっぽい仕掛けのブットビドタバタコメディかと思いきや、実はシンプルな良い話。

 主人公は綾瀬はるか演じるごく普通の女性。特に問題もなく成長し、普通に進学し、就職し、結婚しようかな、というような人生を歩いている人。特にやりたいことはなく、あまりこだわりもない。かといって生きることに絶望しちゃってるわけでもなく、これまでたいして疑問も持たずにやってきた。そういう人は決して少なくないだろう。そんな彼女が「ある日突然本能寺」という事態に巻き込まれて出会ってしまうわけだ。織田信長に。でも歴史はどうなってしまうのか、というタイムパラドックス的な方向へは行かず、織田信長という人に出会って主人公の人生がどう変化するのか、という方に主眼が置かれている。

 人生これでいいのかなーなどと迷いそうになったとき、もし織田信長に会って話ができたなら、人生はどんな風に変わるでしょうね。この作品はそういうお話なのである。生き甲斐が見つからない人必見。

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ケン坊がさらに語る!WEB限定おまけコラム

この記事には映画のネタバレが少々含まれているので、まだ映画を見ていない人はその点をご承知おきの上で読んでください。

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 ホテルのエレベーターから本能寺の変前夜の本能寺に行く、という設定だけ聞くと、歴史改変パラドックスもののSFかな、と思ったりするわけだが、この作品はそういうど真ん中へ飛び込むようなものではなく、織田信長に会うということだけに主眼が置かれている。会ってしまうことで歴史に影響を与えるのではなく、自分が影響を受けるという話なのだ。ぶっちゃけてしまえば歴史は変わらない。本来、未来から訪ねて行って当時の人に会ってしまったなら、それだけでもう歴史は変わってしまうだろう。どんなことになってしまうだろうか、という方を掘り下げればSFになるわけだが、本作においてはそっちはどうでも良い。主人公はあろうことか信長に光秀の謀反についてぶちまけるわけだが、それを信じた上で、信長は自害する。

 この展開が一応納得できるのは、やはり相手が織田信長だからであろう。織田信長という人は新しいもの、珍しいものに対して開かれた人だったという印象がある。未来人が表れても、「そういうこともあるかもしれない」という理解を見せるかもしれない。少々無理がなくもないが、あるかもしれないよね、信長だもんね、という気配が、少なくともほかの武将よりは、ある。

 そして、謀反が起こって自分が自害するという史実を聞かされても、逃げるようなことはしない。本能寺の変が起きた世界には明るい未来があり、そこからやってきた未来人がいることを知り、これなら歴史はそのままで良いと、その未来を守ろうとする。そして未来人が残していった遺失物は、すべて本能寺の変で焼けてしまった。後には何も残らない。パラドックスの問題は無し!という話にしてしまっている。(実際は、茶器を持ってきた際に主人公と接触のあった人物がおそらく生き延びている。そこからパラドックスが発生する可能性はあるわけだがこれはそういうSFではないから良いのだろう)

 実際、本能寺の変については史実と言えど詳細がよくわかっていない部分もあるため、もしかしたら織田信長はその前夜に未来人に会ったというようなことが無いとも言い切れない。もちろんこの作品はそういう可能性を提示するような趣旨ではないものの、歴史に謎が残っているとこんな風に想像を膨らませることもできるのだなぁという楽しさを感じる作品であった。

2017年1月20日