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日本の夏の風物詩「花火」。道内最大規模の花火工場が、旭川にあります。花火の製造販売から、花火大会の企画演出、打ち上げまで手掛ける「株式会社海洋化研」。係長の花火師、齋藤洋平さんは、打ち上げ現場の仕切りも任される入社15年目の中堅社員です。
高校、大学と土木を学び、将来は教員を目指していました。土木工事の発破作業の学習の一環として花火工場を見学する機会があり、それが現在の職場でした。「火薬を扱う緊張感のある職場で、黙々と花火を造る職人さんの姿に憧れを抱いた」という齋藤さん。まったく未知の世界でしたが、若手の採用を考えているという話を聞き、「チャンスが開かれているのだから挑戦しよう」とこの世界に飛び込みました。
入社後、最初の夏には花火大会の現場に出ました。打ち上げ花火を真下から見るのは初めてで、その美しさはもちろん、観客の歓声に感動しました。
齋藤さんは同社で初めて尺玉と呼ばれる10号玉の「四重芯(よえしん)」の打ち上げを成功させたことがあります。尺玉は開くと300メートルにも広がる大玉で、その芯が四層になる四重芯をきれいに出すのは、ベテラン花火師でも難しい仕事です。「打ち上げ現場ではいつも、自分の花火の美しさよりも欠点がよくみえてしまう」という齋藤さん。この時は会心の出来と、観客のどよめきのような歓声に心が躍りました。
「星」と呼ばれる花火のもとは、直径3ミリほどのセラミックの粒に溶かした火薬を何度も塗り重ねることで2~3週間かけて作ります。それを、打ち上げた時に動かないようすき間なく玉に敷き詰めていくのが、花火師の腕の見せ所。星は1個1個微妙に形や大きさが違うため、ぴったりはまるものを選びながらの作業で、半分詰めるのに1日かかることもあります。火薬を扱う緊張感が1日続くと、疲れがどっと出ます。
齋藤さんは毎年コンクールにも出場し、花火師として研鑽を積んでいます。夢は自分の代名詞となるような打ち上げ花火を開発すること。「あの花火はじいちゃんの作品なんだぞって孫に自慢できたら最高ですよね」と目を輝かせます。
観客を楽しませる打ち上げ花火ですが、この2年は新型コロナウイルス感染症の影響で、各地の花火大会が中止になってしまいました。それでも、医療従事者への感謝を込めたサプライズ花火が各地で打ち上げられるなど、人々を笑顔にする花火が希望のシンボルとして、また違った存在感を示した2年でもありました。今年は各地の夏まつりや花火大会が帰ってきます。齋藤さんの花火が人々を笑顔にする夏はもうすぐです。
海洋化研
☎0166-62-6208