釜と職人
仕上がりに影響するという考えから、加藤ラーメンはこねながら熱を逃がす鋳物の釜にこだわります。釜のコンディションは職人が遂一監視
職人

専門店の味を支える

最も親しみ深い料理を問われたなら、一番にラーメンを挙げる旭川市民はさぞ多いことでしょう。昭和初期とされる発祥以降、名店ひしめく現代も旭川ラーメンの味は人々を魅了して止みません。その中でも、全国に名を知られる有名店のひとつがご存知「蜂屋」。開店は、戦後間もない昭和22年にまで遡ります。そしてこの年、市内で最古参の製麺会社・加藤ラーメンが産声を上げました。

創業者の加藤熊彦氏と、蜂屋の初代・加藤枝直氏は実の兄弟。二人は互いに切磋琢磨し、後に蜂屋が自社製麺に踏み切るまで、力を合わせて旭川ラーメンの代名詞とも言われる一杯を提供したのです。

かくも歴史ある加藤ラーメンですが、その名は意外なほど一般市民には浸透していません。三代目の現社長・加藤紀人さん曰く「創業以来、ラーメン専門店の麺を作り続けています。工場先やネットで小売りしていますが、スーパーなどの量販店には一切卸していませんので、案外ご存知ない方が多いようですね」。

量販店で販売しないのは、麺が日持ちしないから。「生前父(二代目・明定氏)から、『保存料やアルコールを使うと小麦の香りがなくなる。だから加藤の麺に保存料は使うな』と叩き込まれました。3年ほど前から、滅菌効果が期待できるホタテの貝殻を特殊に焼成した天然エキスを加えるようになりましたが、それでもおいしく食べていただくには一週間が限度なんですよ」と言う。

普段私たちが家庭で味わう麺は、手で触るとモチモチと弾力が伝わてきます。対して加藤ラーメンの麺は、驚くほどサラリとした手触り。にも関わらず、茹でた麺にはしっかりとした歯応えとコシが生まれます。そんな独特の麺を作り出す秘訣は「加える水の量をできるだけ少なくしていること。それから、熱を逃がしながら粉を練ることができる鋳物の釜を使っていること。これ無しには、ウチの麺は作れない」と加藤社長。そして、あらゆる製造工程において「職人たちの手が加わることも大事」と続けます。

その日の気候や作業時間に応じて職人自らの判断で原料の配合や機械の圧力を調整していく、その微妙なサジ加減が非常に重要なのだとか。

「麺作りにおいて数値化したデータは一切ありません。だから職人の経験とカンが頼り。今までもこれからも、その作り方は変わりません。それこそがウチの麺の良さですから」と、加藤社長は目を細めます。

会社プロフィール
昭和22年、ラーメン専門店用の製麺会社として初代・加藤熊彦氏が創業。昭和42年、二代目・明定氏が引き継ぐ。昭和46年、加藤ラーメン工場株式会社設立。昭和62年、株式会社加藤ラーメンに社名変更。平成7年、札幌営業所開設。平成17年、三代目・加藤紀人氏社長就任。
代表/加藤紀人

[掲載]2011年03月22日